「パリ2024夏季オリンピック」は、バスケットボールの世代が変わる歴史的大一番となるだろう。アメリカ代表は、レブロン・ジェームズやステフィン・カリーなどのスーパースターたちがプレーする最後の国際舞台となる可能性が高く、ニコラ・ヨキッチやビクター・ウェンバンヤマをはじめとするNBAアイコンも数多く出場する見込みだ。

 優勝を絶対目標に掲げ、ドリームチーム編成で大会に挑むチームUSAだが、今夏の大会は百戦錬磨のプレーヤーがそろっても一筋縄でいかない。『ESPN』のシニアライターであるブライアン・ウィンドホルストは、アメリカが苦戦するであろう“4つの理由”に言及している。

◆■NBAトッププレーヤーたちの出場と欧州開催

 アメリカは12名のロスターのうち、レブロンやカリーに加えて、ケビン・デュラント、ジェイソン・テイタム、デビン・ブッカー、ジョエル・エンビード、ドリュー・ホリデーの内定が噂されている。しかし、ウィンドホルストはセルビアのヨキッチやカナダのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーなど、他国のNBAスターたちも参戦を表明しており、リーグでも指折りの手練れたちが立ちはだかると指摘している。

 また、今回大会は2012年のロンドン開催以来、初のヨーロッパ開催となり、前回の東京五輪の無観客試合とは打って変わって、会場はファンで溢れかえることが容易に予想できる。ロンドン開催では決勝でアメリカがスペインを下して戴冠したため、ヨーロッパ諸国はその雪辱を果たすべく、チームUSAにアウェイの洗礼を浴びせるだろう。

◆■未確定のスポット

 先日、グループフェーズの組み合わせ発表が行われ、日本はドイツ、フランスと同じグループBに振り分けられる一方、アメリカはセルビア、南スーダンのいるグループCに入った。

 しかし、出場国は完全には確定しておらず、未確定の4スポットは2024年7月2日から7日に4都市で開催されるFIBA男子オリンピック世界最終予選を勝ち抜いたチームが参戦する。そして、この残されたカードからは、ヤニス・アデトクンボ率いるギリシャ、世界ランキング2位のスペイン、ルカ・ドンチッチ擁するスロベニア、ヨナス・ヴァランチューナスとドマンタス・サボニスがフロントコートを形成するリトアニアなど、欧州の強豪国が登場する可能性がある。

 また、バハマの存在も忘れてはならない。昨年の予備予選でアルゼンチンを破り、快進撃を見せた同国は、ディアンドレ・エイトン、エリック・ゴードン、バディ・ヒールドなど、オールスター一歩手前のNBA選手たちが在籍。また、兄が代表コーチを務めていることから、クレイ・トンプソンもバハマでの五輪出場を「前向きに検討している」とコメントしていた。

◆■ビッグマンの支配

 アウトサイド主体のバスケットボールから一転、最近のバスケットボールはビッグマンの影響力が勝利に欠かせないエッセンスとなっている。アメリカが近年苦戦を強いられている理由は、ライバル国の圧倒的な組織力と、各チームでエースを任されているビッグマンの存在に他ならない。

 ヨキッチはセルビア代表がストレートインに成功したことで、仮にデンバー・ナゲッツがNBAファイナルに出場したとしても、1カ月程度の休養が与えられる。また、開催国のフランス代表は、ウェンバンヤマとルディ・ゴベアの無慈悲なツインタワーがペイントエリアに君臨。さらに、モリッツ・ワグナーとフランツ・ワグナーの兄弟のほか、ダニエル・タイス、ヨハネス・フォイクトマンらによるドイツ代表のサイズも脅威的であり、悲願の優勝を果たしたW杯では準決勝でアメリカを下した実績がある。

 アメリカがエンビードのコミットに奔走したのは、これが最大の理由と見る。同選手はケガの状態が気がかりだが、アメリカは欧州の屈強なビッグマンたちに対抗できるラインアップを用意してくるだろう。

◆■ダークホースのカナダ

 カナダは世界ランキングこそ7位に過ぎないが、フルメンバーで参戦することになれば優勝候補に名前を挙げなければならない。

 ロスターの候補者には、MVP級の活躍を続けるシェイのほか、アンドリュー・ウィギンス、ジャマール・マレー、RJ・バレット、ディロン・ブルックス、ルー・ドート、ベネディクト・マセリン、ケリー・オリニク、シェンドン・シャープらが名を連ね、ベンチにさえNBAのスタータークラスが控えるほど層が厚く、ベテランと若手のバランスも良い。

 個々の実績こそアメリカには敵わないが、カナダであればチームUSAに黒星をつけても全く不思議に思うことはないはずだ。

文=Meiji